読者の皆様は廃棄物の不法投棄というと、まず犯罪性が高くマスコミの露出度の多い産業廃棄物の不法投棄が思い浮かぶのではないでしょうか。産業廃棄物の不法投棄は土壌・水質汚染等環境保全に対する影響及び経済的損失が非常に大きなものがあります。本来廃棄物を適正に処理し不法投棄がなければ発生しない費用が、行為者不明、行為者の資力不足等の事由で行政代執行等の措置がとられ多額の税金等が使われています。香川県豊島不法投棄事案、青森岩手県境不法投棄事案等です。また、前述ほどの規模でなくても産業廃棄物の不法投棄事案は新聞等のマスコミにより日常的に報道されるなど全国的に多発し深刻な問題となっています。幸いなことに中国地方においては各自治体の厳正な指導・監督、各事業者等の適正な処理等により前述クラスの大規模な事案はありません。このような状況の下、個人的には一般廃棄物の不法投棄について考えさせられています。タバコ、空き缶、弁当がら等の生活ごみ、リサイクル料金を惜しんでの廃家電及び廃自動車、大掃除・引っ越し等で不要になった粗大ごみ等様々な一般廃棄物の道路、河川、谷間、海、山林、田畑等への不法投棄、コンビニ、スーパー、公共施設等のごみ集積所への持ち込み、ごみステーションへの指定日時等のルールを守らないごみ出しといった行為が私達の身近で毎日のように起きています。こうした一般市民による目に余る不法投棄により廃棄物の不法投棄に関する苦情件数は年々増加し、一般廃棄物に係るものが産業廃棄物を上回っています。一般廃棄物の不法投棄は産業廃棄物の不法投棄に比べ１地点１回あたりの投棄量は少なく環境保全に対する影響が直ちにでるというものではありませんが、長い年月が経てば影響もあり、また全国トータルでみると量・処理費用は計り知れないものがあります。
　昨年１２月広島市不法投棄防止連絡協議会のキャンペーン（毎年場所を選定し実施）で広島市佐伯区五日市内の谷間を市民・業者・行政等約２８０名参加により清掃活動を行い、生活ごみから粗大ごみまで２トン車１２台約１１トンを収集しました。
　毎年参加し、また到る所に不法投棄（ポイ捨て）されている現場を見て思うことは「モラル」です。社会生活を営むうえで廃棄物（ごみ）は出ます。このごみを指定日時等ルールに則りごみステーションに出す等のごく簡単で適正な処理行為が守られず、前述のような不法投棄があります。何故ごく簡単なルールが守れないのでしょうか。自分のことしか考えない自己中心的な人間が増えてきており、ごみの不法投棄だけでなく社会全体のモラル・マナーの低下が一因であり大きなウエイトを占めていると思います。行政は不法投棄防止の対策を講じ実行していかなければなりませんが、市民の理解・協力なくして不法投棄はなくなりません。今回環境省職員としての執筆ですが、一市民の日頃の思いということでご理解下さい。