マクロ的に見ると、現在日本で1年間に使用される物資の総量は19.7億トン(平成15年度)あり、このうち建物や社会インフラとして蓄積されるのが9.3億トン、エネルギーとして消費されるのが4.2億トン、食料としての消費が1.2億トンですが、廃棄物が5.8億トン発生し、このうちリサイクルされる量は2.2億トンです。使用される総量に比べてリサイクルされる量の割合はまだ1割強と低い水準にとどまっています。循環型社会を実現するためには、第一に使用総量を減少させること、第二にリサイクル資源量を増やすことが必要でしょう。
リサイクルの現実の動きを見ると、まだ目標とすべき具体的な方向が十分明確になっているわけではありませんが、大きな環と小さな環の2つの動きを考えていく必要があります。大きな環は国境を越えたモノの流れです。2000年に容器包装リサイクル法が全面施行された段階では、リサイクル・システムは国内で完結した形で考えられていましたが、その後の動きは廃PETボトルに典型的に見られるように、回収されたボトルは国内の施設には行かず中国等に流れてしまっています。したがって経済性も考えたリサイクル・システムは、少なくともアジア大の資源循環の中で考えなければ実効性が得られない現実となっています。
小さな環は日本全体をカバーするほど大きくはなく、もっと小さな地域単位での循環システムです。製品として消費されたものは地域的にも分散し、使用形態も他の素材と複合化されたり、不純物で汚染されたりして廃棄されます。したがってこれらを収集し、再生させることは熱力学の法則を持ち出すまでもなく、収集し純度を上げるために膨大なエネルギーを要することになります。生産段階のように単純に規模を大きくすれば効率が上がってコストが下がるわけではないので、地域のまとまりの中で適正な規模を見出さなければなりません。この小さな環を現実に動かす重要な要素が再資源化のための技術と処理設備です。リサイクルの幅を広げる意味では、セメント焼成炉、非鉄金属の精錬設備、鉄鋼の溶鉱炉などは処理の難しい成分が含まれていても特別な分離をせずに処理できる特色を持っています。中国地域にはこうした設備が多数立地し、小さな環を実現するのに大変有利な立地条件となっていることは、改めて認識されてよいでしょう。 |